不登校のキミへ送るラブレター〈不登校だった僕が伝えたいこと〉
はじめまして。
僕は、滋賀の草津でNPO法人 D.Liveという団体をしている田中洋輔(たなかようすけ)だ。
みんなからは、イチローって呼ばれている。
(理由については、会ったときにでも聞いて欲しい)
さて、今日はキミに話したいがあって、文章を書いている。
僕は今、32歳になるけれど、実は、僕も学校へ行けないことがあった。
高校生になって不登校になったけれど、中学生のときから、いや小学生のときからなにかが変だった。
小学1年生の三者面談。
担任の先生に、「田中くんは、よくわかりません」と言われた。
そのときから、僕は自分が先生にはよくわからない、理解できない人間なんだと自覚した。
どんなことをしても、ほとんど理解されなかった。
先生はもちろん、親でさえも。
「わかって欲しい」と思うけれど、僕も思春期になり、大人への反発心もあった。
「わかってくれなくていいや」と、いつの間にかあきらめるようになっていた。
心の底では、大人にわかって欲しかった。
理解してもらうおうと思った。
でも、誰も僕の気持ちを理解してくれる人はいなかった。
中学3年生になり、僕はだんだん、誰も自分のことがわかってくれないんじゃないかと思うようになっていった。
仲の良かった友達とも話すことが少なくなり、声をかけてきた人をにらみつけた。
気がつけば、僕の周りには誰もいなくなった。
どうでも良かった。
どうせ誰も自分のことをわかってくれないんだ。
理解できないんだ。
「田中くんは、りかいできない人」なんだから。
僕は、大人を敵だと思うようになった。
倒すべき相手であり、闘うべき対象だった。
部活の顧問には、「殴れるなら殴ってみろよ」と掴みかかったこともある。
自分でも、なにがなんだかわからなかった。
自分自身がわからなかった。
学校へは行くものの、授業中はずっと寝ていた。
修学旅行へは行ったけれど、なにをしたのか、どこへ行ったのか今でも思い出せない。
あの頃の記憶がごっそりなくなっているんだ。
きっとイヤな思い出を脳が削除したのだろう。
その頃の記憶がほとんどない。
ただ言えることは、僕は自分で自分がコントロールできなくなっていた。
まるで、魔物に体を奪われているかのような感じだった。
ある日、僕は全速力で自転車をこぎ、電信柱へ飛び込んだ。
目を覚ましたかった。
自分が自分でなくなる感覚が怖かった。
でも、当然そんなことでなにかが変わることもなく、僕は頭からダラダラと血を流しながら、自転車を手で押しながら家へ帰った。
あのとき、僕には相談できる人が誰もいなかった。
大人は全員が敵で、友達も「どうせわかってくれない」と諦めていた。
でも、心の底では、誰かにわかって欲しいと思っていた。
あのとき、僕のそばで、じっくり話を聞いてくれる人がいたなら、僕の人生は変わっていたのかも知れないなと、今でも思う。
僕は、子どもの頃に、僕が欲しかった存在になろうと思って、今の仕事をはじめた。
僕は、「キミの気持ちがわかるよ」なんて言うつもりは全くない。
「一緒に学校へ行けるようになろう!」なんて、安っぽい学園ドラマの先生みたいなことも言わない。
正直、キミが学校へ行こうが行くまいが僕にはどっちでもいい。
どうして、学校へ行かないとダメなんだ?
勉強が遅れるから?
みんな行っているから?
それがどうした?
勉強なんて自分でも出来るし、世界中で見れば学校へ行けない子どものほうが圧倒的多数だ。
行けなくてもなんら問題は、ない。
だから僕は、キミに「学校へ行け」とは、口がさけても言わない。
別に学校なんてどうでもいいと言いたいわけじゃない。
学校へ行けば友達もいるし、勉強もできる。楽しいこともいろいろあるだろう。
キミがもし、「学校へ行きたい」というのであれば、それでいい。
僕は、学校へ行けない子たちと関わる仕事をしている。
彼らに言うことは、1つだけだ。
「キミは、どうしたい?」
学校へ行けない理由なんて、なんでもいい。
カウンセリングをして問題点を見つけたとしても、果たしてそれで学校へ行けるのか?
(行けるならそれでいい。カウンセリングには合う子と合わない子がいる)
原因や理由なんて、どうでもいいじゃないか。
それは、過去の話だ。
問題は、今であり未来だ。
変えられない過去を嘆くのではなく、今を変えようとするほうがよっぽど生産的じゃないだろうか?
僕は、中高生時代、とても苦しかった。しんどかった。
誰も味方はいなかった。
「なにかあったらなんでも言うてこい」と声をかけてくれる先生がうさんくさくてしょうがなかった。
だから、僕はキミに、先生のように、「僕になんでも話してごらん」なんて、決して言わない。
学校へ行けない原因も性格も環境も、みんな違う。
キミには、キミの課題があるだろう。
だから、教えて欲しいんだ。
「キミは、どうしたい?」
「現状のなにを変えたい?」
僕自身、なにで苦しんでいるのか全くわからなかった。
どうして、こんなにイライラするのかもわからず、ただしんどかった。
キミが思っていること、考えていること、感じていることを聞かせてくれないだろうか?
「問題を解決する」なんてことを僕は思っていない。
ただ、キミが望む未来へ向かって進む手助けがしたいだけだ。
僕の話は、以上だ。
さぁ、君の話を聞かせてはくれないだろうか?
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