普段着できるソーシャル –あるファッションブランドが示す新しい”寄付のカタチ”とは

2007年から2016年まで、株式会社KIRINで「1ℓ for 10ℓ 」という寄付プログラムが実施されていた。KIRINの発売する「Volvic」という飲料水を買えば、その売り上げの一部がアフリカ・マリ共和国に清潔で安全な水を届けるための給水施設や井戸をつくることにつながるプログラムだ。
私はKIRINの例のような、何かを買えばそれが寄付になるというチャリティー商品がずいぶん広がってきたように感じている。私が大学生の時に、友人が一年間フィリピンのボランティアに従事していたことがあった。友人の仕事は、ジュースの空きパックをバッグやポーチに再利用して商品化する仕事のお手伝いが中心だったそうだ。私も友人の勧めでポーチを買ったことがある。もともとはジュースの空きパックだから水がしみこんだりしないし、デザインも良かったので今でも旅行に行く時には重宝している。
そのポーチと同じようなものが、あるアパレルブランドで販売されているのをその2年後くらいに見かけるようになった。「おぉ、こんなにも浸透したのか」と関心したものだ。KIRINの「1ℓ for 10ℓ 」や、アパレルブランドがチャリティー商品を卸した例のように、それをきっかけに社会課題に少しでも関心が向くことは本当に素晴らしい動きだ。
しかし、先日のブログ”NPOとコラボし続けるファッションブランドJAMMINさんのおもてなしがヤバすぎる”
こちらで紹介したファッションブランドJAMMINはその一歩先を行く。
期間限定や一部がチャリティー商品という展開が主流のなか、JAMMINは全商品がチャリティー。毎週様々なNPO/NGOを取り上げて、その思いをTシャツのデザインにして届けている。Tシャツ1枚の売り上げから20%が自動的に、その週に取り上げられた団体に寄付される仕組みだ。
品として良いものを購入できればお客さんもハッピーになるし、ブランド側もモノが売れて、社会問題にも貢献できてハッピー。(JAMMIN HPより引用)
みんながハッピーになる仕組みをつくり、ファッションを通して社会問題の解決をめざすJAMMIN。
JAMMINのHPには
日常生活で何気なく使っているもの。それが社会をよくするために作られたアイテムだったら、毎日の生活はもっと素敵なはず。その中でも、ファッションは、自分らしさや気持ちを表現する一つ。私たちのチャリティーアイテムを日常のファッションに取り入れて、自分らしさを表現して欲しい。私たちは、そんな内面的な美しさを表現したコンシャスなライフスタイルを目指しています。
とあった。
私はJAMMINという会社に寄付や社会課題への関わりに新しい可能性を感じている。1つは、これまで書いてきた全商品の20%が寄付されるということ。しかも、毎週発売されるどのTシャツのデザインもオシャレなので普段から着ることができる。これは消費者にしてみれば結構ありがたい。もし、団体のロゴや団体名がデカデカと入っていたりしてたら、あまり社会課題に関心のない層からすると何度も着ようという気持ちにはなれない。
しかし、JAMMINで販売されるTシャツには一切ロゴや団体名は入っていない。デザインはJAMMINの社員が、団体にヒアリングしたことをデザイナーに伝えて、デザイナーが決める。私たちD.Liveも1月16日(月)からTシャツが販売されるが、団体名やロゴは一切入っていない。
このような消費者のことを考えたデザインが寄付のハードルを下げて、普段着できるソーシャル感をつくっている。日本では、まだまだ気持ちの面で寄付に対するハードルが高いので、このような新しい形の寄付がどんどん広がっていって欲しい。
(これがD.LiveのTシャツ。トランクがモチーフになっている)
もう一つの可能性というのは、働き方についてだ。社会課題に対しての関わり方といえば、NPOなどを立ち上げてたり、就職したりして課題解決に向けて邁進する。あるいは、休みの日など空いた時間でボランティアで関わる。企業のCSR活動としてプロジェクトを行う。この3つが主流だ。けれど、JAMMINは企業としての活動がそのまま社会課題の解決支援つながるような仕組みになっている。
これがすごく新しい。何が新しいのかというと、ボランティア活動と対比するとわかりやすい。ボランティアはいわばマンパワーとしての援護射撃だ。休みの日や空いた時間を使って、支援したい団体に協力する。でも、仕事が忙しかったら参加できない日もある。
対して、JAMMINは資金面からの援護射撃だ。さらには、ボランティアとは違って仕事をすることがそのまま支援につながるから、忙しいから支援できないということがない。今まで、社会課題への関わりというのは選択肢が少なかったので、JAMMINのような仕組みは今後参考になる部分も多いだろう。
最後に、6日(金)にJAMMINにてTシャツ作り体験をしたときに社員の高橋さんにお話を伺ったので、高橋さんの話を紹介して終わりにしたい。
(写真がJAMMINの高橋さん)
ーーHPの高橋さんの紹介欄には、「コンサルタントとしての仕事は、問題を抱えている個々人に対してではなく「街全体をよくする」とか「国全体をよくする」という案件がほとんど。その規模の大きさに喜びややりがいを見出していた反面、僕にとってはあまりにも対象が大きすぎて、手応えを感じ切れないところがあった。」とありました。今、JAMMINを立ち上げて3年ほど経つと思うのですが、以前と比べて仕事についてどのようなやりがいや喜びを感じておられますか。
高橋さん:一番やりがいを感じるのはSNSとかで、「こういうサイトを見つけたことが嬉しい!」とか言ってくれると嬉しいですね。コンサルをしてた時は役所が仕事の相手だったので、お礼を言われることがあまりなかったんですよ。私の仕事は市民のかたにとっては裏方なので、市民の方々からお礼を直接言われるような立場じゃなかったんですね。そういう意味では、今は直接お礼の言葉を聞けるので嬉しいですね。
ーーD.Liveに声をかけてくださったのは、どうしてですか。
高橋さん:会社が京田辺市にあるんですけど、そこからも近いということはありましたね。子ども支援って東京とかには多いんですけど、僕はこのような団体って地方全部にあったほうがいいと思っているタイプですので滋賀でやっているということが大きかったですね。そういう地域で若い方がやっているってあんまり聞かないので頑張ってほしいなと。
ーーたくさんの団体のヒアリングをしていると思うのですが、その上で気をつけていることはなんでしょう。
高橋さん:その人の人となりを大切にしていますね。活動だけじゃなくて、その人が何を好きか嫌いかということも聞こうというしています。意外と活動している人のことって知らないじゃないですか。そういう部分も聞くことを大切にしていますね。
ーーD.LiveのTシャツをデザインする上で心がけたことや表現しようと思ったことについて教えてください。
高橋さん:デザイナーとも話していましたが、自分の中に宝物があるということをどう表現するかを心がけましたね。結構いろんなアイデアが出て、なかなか決まらなかったじゃないですか。どの団体でもそうなので、たくさんの選択肢を出して納得する1つものを選んでもらうことを心がけています。モチーフのトランクも実は結構でるの時間かかりましたね(笑)
ーーなるほど、裏の苦労がたくさんあったんですね。貴重なお話ありがとうございました。