褒めずに「感情に寄り添う」接し方
不登校ボランティアに携わっていたころ、よく言われていたことがあります。
子どもは褒めちゃだめだよ。
例えば昨日英語のワークがんばったよ!と子どもたちが言っても、目の前でゲームに勝って喜ぶ子どもがいても、「めっちゃがんばったね!えらいね!すごいね!」と、褒めてはいけない。最初に言われた時は、じゃどうやって子どもに接すればええねん、と思いました。
ですが、徐々に「褒めてはいけない」理由がわかってきた今、子どもたちに「褒めない」やり方もずいぶん慣れてきた気がしています。
っていうか、なんで褒めちゃいけないの?
これは様々な理由があるのですが、今回はアドラー心理学から考えてみましょう。
褒めることによって一番大きく影響がでるのは、何よりも「子どもたちが褒めることを目的に行動を始めてしまう」ことでしょう。
次のテストで100点取ったら好きなオモチャ買ってあげるよ。確かに子どもたちはそういわれたらものすごくやる気に満ち溢れるかもしれません。でもちょっと待ってください。子どもたちのがんばる目的が微妙にすり替わってはいませんか??
もしも本当にそこで100点を取ったとしても、その目的は「好きなオモチャを買ってもらうため」でしかありません。目的が消滅したその瞬間、子どもたちは急激にやる気を失うことになります。「日常的に勉強に取り組む」ためにご褒美を設定したのならば、まず間違いなく定着しないでしょう。
それに、100点取るごとにオモチャを与えていては金銭的にも大変なものがあります。一度でも100点を取ってオモチャが出ないと分かったときに信頼関係を損ねたりすることも・・・。
本当に子どもたちに勉強することを習慣づけてほしいと願うならば、一番やってはいけないことが「褒めること」なのです。
「感情」に寄り添ってみる
では、テストで100点を取ったよ!と子どもたちが自慢してきたとき、どういう反応を見せればよいのでしょうか。
僕がボランティアに携わっていたときに教わったのは、「感情に寄り添う」ということ。
テストで100点取ったよ!とニコニコ顔で見せてくる子どもたちの心情には、ひとつ「この喜びを誰かにわかってほしい」という気持ちが隠されています。その気持ちに寄り添って「うれしい気持ちがこちらにも伝わってくる」ことを子どもに伝える手法です。
これならば別に褒めている訳ではありませんし、もしも悲しい感情、悔しい感情を持っていた場合も悲しい気持ちに寄り添えば良いわけです。
よくワークショップなどで数名に分かれて「今思っていることをシェア(共有)しましょう」と参加者が思っていることを率直に打ち明ける場面がありますが、これに似たようなものがあるかもしれません。それくらい、感情に寄り添ってくみ取るというのは大切なことだと思います。
「褒めて育てるのが良くない」という言葉に悩む親御さんや教育関係者の皆さんは是非、「感情に寄り添う」という接し方を試してみてください。ひょっとしたら子どもたちのリアクションも何か違うかもしれません。