子ども食堂でも学習支援でもない子どもの居場所

「田中さん、申し訳ないんやけど、今度視察に来られるから、対応お願いしてもいいですか?」

TudoTokoがはじまる前、子ども家庭課で担当してくれている人より話をいただいた。

「カシハラ市から来るみたいよ」
視察に関する資料を良く見ると、”柏原市”と書いていた。

“柏原市(かしわら)”は、僕の地元だ。

滋賀県まで来て事業をはじめ、まさか地元の議員さんが視察に来られるとは思いもしなかった。

なんだか感慨深い気持ちになりながら、授業をはじめた。

 

目次

子どもたちの居場所

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TudoToko(つどとこ)は、「子ども、大人、みんながつどうところ」ということで名付けた。
ロゴには、家でみんなで楽しそうにくつろぐ感じを出している。
(真ん中の白いところは、ちゃぶ台のイメージ)

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対象は、ひとり親家庭の中学生。
登録制で、基本的には同じ子が毎回来る。
毎週2時間、勉強や食事、ワークショップなどをおこなう。

現在、生徒は11人。

草津市で以前におこなっていたサービスが生徒3人ほどだったのを考えると上々だろう。

定員は20人だが、もうしばらくしたらいっぱいになりそうな感じ。


5年かかった念願


ずっと夢見ていた。

こんな場所を。

TudoTokoの素案を作ったのは、2011年5月。

学童とカフェが一緒になったガクカフェがある1日

5年前にやりたかった企画が、形は違えどやっと実現した。
ここには、僕がやりたかったことがたくさん詰まっている。

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生徒「トマト食べられたでぇ〜」
料理を作ってくれるおかあさん「おお!すごいやんかぁ」
生徒「がんばってん」


食事のあとの何気ない会話。

TudoTokoには、たくさんのボランティアさんが関わってくれている。
大学生や民生委員、地域で活動している方々。
年齢も10代から上は吉永小百合さんを若くしたくらいの方まで幅広い。

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正直、TudoTokoでおこなっている僕たちのプログラムなんてものは、あくまでも添え物。

大切なのは、生徒たちがたくさんの大人と関わること。
「見守ってくれる人たちがいる」と感じられることだ。

ボランティアさん「私、若い子たちと一緒にいたらどんどん若返るわ。毎回10歳くらい若返りそうやなぁ」
僕「おお!じゃあ、もう少ししたら生徒より年下になりますね 笑」

なんて話すように、ボランティアに来てくれる人も楽しく参加してくれている。

生徒が「こんなにいっぱいの人数でご飯なんか食べたことないかも」というように、みんなで囲んで食べるご飯はおいしい。

 

ボランティアさん「どうどう?おいしい?どうやった?」
生徒「めっちゃおいしい〜〜」
ボランティアさん「せやろ〜〜。隠し味いっぱい入れたからね〜」
「ああ、愛情がたくさん入ってるなぁ」


なんてやりとりを毎回やっている。

なにかを教える。
なにかを提供する。

そんな”サービス”をする場ではない。

居場所について知り合いと話していて印象的だった言葉がある。

「居場所ってものは、つくるものではなくて、あるものだと思うよ」

僕たちが気張って「居場所を作ろう!」と意気込んだところで、子どもたちはなかなか来ない。

TudoTokoがプログラム作りや環境づくりで大切にしているのは、ただ1つ。

「次も来たい。楽しかった」と思ってもらうこと。

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そんな場さえ作れば、あとは来てくれている人たちみんなが触媒となり、化学反応が起きる。

だからこそ、生徒とボランティアさんの何気ない会話を僕はとても大事にしているし、嬉しいなぁと思いながら見つめている。

今は、地域の希薄化で、子どもと大人が関わる機会が減っている。
ちびまる子ちゃんのように、おじいちゃんやおばあちゃんと住んでいる子も少なく、近所にサザエさんのような伊佐坂先生もいない。

でも、子どもたちが生きていくには人との関わりが不可欠。
自分を見守ってくれる人たちがたくさんいれば、救われる。

29.8%もの子どもが孤独を抱えていると回答する日本の子どもたちにとって、地域の人たちとの関わりはなによりも代えがたい財産になる。(※1)

特に、ひとり親家庭の子たちは、親と過ごせる時間も少なく、寂しい気持ちを抱えることが多くなってしまう。
彼らが、「楽しいな」と思える場所になれば、僕はそれで満足だ。

 

まだ、1ヶ月もたっていないけど、ここはすごく居心地がいい。

「自分が自分であって大丈夫」と思える場所。

ボランティアの人たちは、優しく見守ってくれ、美味しい料理を作ってくれる。
大学生は、近所の兄ちゃんや姉ちゃんのように気さくに話しかけてくれる。

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「この前の試合どうやった?」
「宿題、出来てきた?」

とりとめもない会話かも知れないけれど、僕はその言葉1つ1つが子どもたちを包み込む、優しさに溢れたものであると信じて疑わない。

生徒の公募はしていないし、基本的に見学も受け付けていない。
(生徒への配慮のため。)

でも、「見て欲しい」って個人的にすごく思う。
(見学募集していないけど)

空気感、雰囲気がすごくいい。

僕もやっていてとても楽しい。

「あなたが楽しくないなら、生徒も楽しめないわ」とメンター(師匠)に言われたことがある。

まさにそう。
自分自身が楽しいと思えないところを子どもが好きになることもないし、心から楽しめることもない。

 

届け、届け、届け

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子ども食堂でも学習支援の教室でもない。

TudoToko(つどとこ)

ここは、「子ども、大人、みんながつどうところ」

こんな場所をもっともっと増やしていきたい。

 

僕たちの団体は、まだまだこれからで、やりたいけど出来ないことも多い。
届けたい子たちに届けられていないもどかしさを感じることが日々ある。

活動がうまくいけばいくほど、「届けたい」気持ちは強くなり、「届いていない」子が見えてくる。

孤独を抱えた子、しんどくて自分を信じられない子。

そんな子たちへ、こんな素敵な場をもっともっと届けていきたい。

 届くかな?届くといいな。『四月は君の嘘』

※1 日本の子ども、先進国の中で最も「孤独」

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この記事を書いた人

1984年 大阪生まれ 立命館大学文学部卒

中学時代は、部活に打ち込み、勉強では学年で常にトップ10以内。
しかし、中学3年生のときから学校がしんどくなり、誰とも話さなくなる。
野球選手を目指し、大阪の野球強豪校へ行ったものの、自信を失い退部。そこから学校へ行かず、河川敷で過ごす毎日をおくる。
浪人して立命館大学へ入学したものの、なにをしたいかが分からなくなり、行く意味を失う。1回生の夏から1年ほど、京都の下宿で引きこもる。
友人の支えもあり、復活。政治家の秘書やテレビ制作などのインターンをおこない、期間限定のカフェも開く。「自分のようにつらい思いをさせたくない」と思い、D.Liveを立ち上げる。
フリースクールや自信を取り戻す教室を運営。不登校に関する講演や講座もおこなっている。
京都新聞にして子育てコラムを連載中。
詳しいプロフィールはコチラから

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